味の素の企業研究

この記事では、味の素株式会社の企業研究についてまとめます。
(2023年1月時点の情報に基づいています)

10秒でわかる、味の素のまとめ

世界初のうま味調味料「味の素」を販売。以降、一貫してアミノ酸を通じた食品・ヘルスケア・電子素材の事業を展開。

「ほんだし」、「Cook Do」など強い食品ブランドを多数持ち、日本では5,000億円ほど、アジア・アメリカそれぞれで3,000億円ほどの売上。

直近の純利益は757億円。従業員一人当たり純利益は221万円。(22年3月期)

会社概要

会社名味の素株式会社
URLhttps://www.ajinomoto.co.jp/
本社東京都中央区京橋一丁目15番1号
資本金799億6,300万円
従業員数3,252名
事業概要食品事業とアミノサイエンス事業を柱とした幅広い事業をグローバルに展開
管理人

1909年創業、世界初のうま味調味料「味の素」を世に送り出したところから、一貫してアミノ酸や食品を通じた事業を展開。

社名でもあるうま味調味料「味の素」のほか、「ほんだし」、「Cook Do」、「クノール」など強い食品ブランドを多数持ち、日本では5,000億程度の売上、アジア・アメリカそれぞれ3,000億近くの売上を持つ。

この構造が面白く、アジアでは調味料を中心とした売上、すなわち「普段使いへの寄り添い」である一方で、アメリカでは、調味料もさることながら、冷凍食品を中心とした売上、すなわち「アジアン料理を摂る」という文化拡大で構築している(さらに言えば日本以上に冷凍食品販売売上額が大きかったりする)。

さらに、あまり知られていないが、アミノ酸のノウハウを応用し、半導体絶縁材料や医薬品などにも多角的に事業を拡大しており、中でも半導体絶縁材料においてはパソコン向けシェアほぼ100%という驚異的な状況。

アミノ酸というコア技術を通じて、強みを多角的に伸ばしている唯一無二の会社と言えるだろう。

理念・ビジョン

アミノ酸のはたらきで食習慣や高齢化に伴う
食と健康の課題を解決し、人びとのウェルネスを共創します

味の素 HP「ビジョン」より

管理人

味の素は、うま味物質の発見を起点に、グルタミン酸の加工利用や他アミノ酸の用途開発などで事業を拡大してきた。

その背景で一貫した思想は、「アミノ酸のはたらきで食と健康の課題を解決したい」という志。

このビジョンの実現のために2つのアウトカムを定めている:

  • 2030年までに、10億人の健康寿命を延伸します。
  • 2030年までに、事業を成長させながら、環境負荷を50%削減します。

企業のビジョン・ミッションがお題目的になりがちな中、アニューアルレポートで数値ベースに自社のミッションの進捗・在り方を社会に明示している姿は素晴らしいにひとこと。

業績

売上・純利益(株主帰属)の推移

直近の純利益(株主帰属)

757億円

2022年3月期

従業員一人当たり純利益

221万円

2022年3月期
連結従業員数34,198名で除算

事業利益の構成(2022年3月期)

管理人

事業利益から法人税を差し引いたものが概ね純利益となるため、セグメントごとの業績は公開されている事業利益構成から推し量ることにする。

調味料・食品セグメント、冷凍食品セグメントにおいては、海外の家庭用製品の好調やコロナ禍からの復調で外食用・業務用製品の販売が一部復調しつつある。

しかしウクライナ情勢などの影響で、原燃料や食品原料費の増加に影響を大きく受け、この2セグメントはいずれも増収減益という厳しい状況。

一方、ヘルスケア等セグメントでは、うま味調味料の副産物を使って開発された半導体絶縁材料(ファンクショナルマテリアルズ)、先端バイオ・ファイン技術を核とした製薬カスタムサービス(バイオファーマサービス)の販売好調により、大幅に増収増益。

調味料や食品最大手の企業というイメージが強いが、アミノ酸を扱う技術で医薬や電子材料などの領域に多角化し、コロナ禍で食品領域は打撃を受けたもののヘルスケアや電子材料の領域が堅調に牽引した結果、大幅な増益となっている。

食品領域では、今後とも不透明な原燃料・原料費に対して、値上げに加え減塩やタンパク質強化などの製品投入し訴求を強化していく目論見のようだ。

バランスシート(2022年3月時点)

自己資本比率

50.8%

調達資金のうち、純資産、すなわち金融機関等に返す必要のないお金の割合

流動比率

179.1%

1年以内に発生する支払い義務が生じる負債に対して、すぐに現金化できる資金を持っている割合。一般に100%以上が適正、200%以上は安全

総売上回転率

0.79回

売上に対する総資本の割合。多すぎない元手で適切な売上を得られているかを示す。業種に寄るが、一般に1~1.5回以上が効率的な経営の目安

主要な働きかたの指標(2021年度)

入社後3年定着率

100.0%

平均勤続年数

20.9年

有給休暇平均取得

16.0日

月平均残業時間

24.0時間

管理人

従業員のエンゲージメント(従業員満足度)を、時価総額やコーポレートブランド価値と同レベルに、企業価値を高める重要な要素と位置づけている。

実際、コーポレートサイトにはエンゲージメントの推移を公開していたりもするくらいで、かなり本気がうかがえる。

「働きがい」を大切にする文化の表れか、定着率も勤続年数も非常に高い。

新卒採用の動向

直近の採用人数

2022年度90名
2021年度59名
2020年度47名
管理人

コロナ前は毎年90名前後を採用していたようだが、今後の業績回復見込みを踏まえてか、22年度にはその水準まで採用数を復活。

24年度の新卒募集対象者は、営業が30~40名、生産職が30~40名の募集枠に対して、R&D(研究職)は50~70名程度と多い。

味の素は研究職の社員が多いことでも知られるが、新卒もそれに沿っている。