凸版印刷の企業研究

この記事では、凸版印刷株式会社の企業研究についてまとめます。

(2023年2月時点の情報に基づいています)

10秒でわかる凸版印刷のまとめ

出版・DX化などの「情報コミュニケーション領域」、包装材や建装材の「生活・産業領域」、フォトマスクなど半導体部材の「エレクトロニクス領域」の3領域が、凸版印刷の事業の柱です。

特に、データ活用を主軸としたBPO(Business Process Outsourcing)トータルソリューションに強みを持ちます。

そのほか、包装素材等をサステナブルな素材に転換を図ろうとする海外の生活系事業の拡大を目論んでいます。

直近の純利益は1,232億円。従業員一人当たり純利益は227万円(22年3月期)

会社概要

会社名凸版印刷株式会社
URLhttps://www.toppan.co.jp/
本社東京都台東区台東1丁目5番1号
資本金1,050億8,600万円
従業員数連結 54,336名
事業概要「印刷テクノロジー」をベースに「情報コミュニケーション事業分野」、「生活・産業事業分野」および「エレクトロニクス事業分野」の3分野にわたり幅広い事業活動を展開

会社概要の補足

1900年創業、大日本印刷と双璧を為す、日本の印刷業界の2大巨頭の一角です。

印刷技術をユニークネスの起点とし、次の3つの事業領域を展開しています:

  1. 情報コミュニケーション部門
    • 出版などコンテンツマーケティング事業のほか、セキュアソリューションサービスや、文書の電子化・管理委託などから発展したBPO(Business Process Outsourcing)ソリューションサービスを展開しています。
  2. 生活・産業部門
    • 食品や飲料などの包装のほか、建装材(建築物の見た目を整える壁紙や床材)の展開をしています。
  3. エレクトロニクス部門
    • 印刷素材の開発からノウハウを転用し、フォトマスク(電子部品の回路パターン等を被転写対象に転写する際の原版)のような半導体部材や機能性フィルムなどを開発・展開しています。

理念・ビジョン

私たちは

常にお客さまの信頼にこたえ

彩りの知と技をもとに

こころをこめた作品を創りだし

情報・文化の担い手として

ふれあい豊かなくらしに貢献します

凸版印刷 HP「企業理念」より

創業事業の「印刷」に強い思い入れのある言葉です。

印刷の持つ再現性や創造性、精緻さを「彩り」と表現しています。

それを引き出す企画力やマーケティング力を「知」、技術力を「技」として、自社の強みを定義しているようです。

業績と戦略

売上・純利益(株主帰属)の推移

直近の純利益(株主帰属)

1,232億円

2022年3月期

従業員一人当たり純利益

227万円

2022年3月期
連結従業員数54,336名で除算

営業利益の構成(2023年3月期)

営業利益から全社コスト、法人税等を差し引いたものが概ねの純利益となるため、セグメントごとの業績は公開されている営業利益構成から推し量ることにします。

22年3月期は、情報コミュニケーション領域は、商業印刷物が伸び悩む一方、デジタル領域でのセールスプロモーション反動などもあり、前年比で営利0.2%の微増でした。

また、生活・産業領域は、国内のトイレタリーや外食向け軟包材の回復傾向や住宅市場の緩やかな回復傾向に支えられ、前年比で営利3.0%の増でした。

一方、22年3月期はエレクロトニクス領域の成長が目覚ましいです。

ディスプレイ関連事業では、テレワークや巣ごもり需要増に伴うノートPCやモニター向けの反射防止フィルムや、産業機器の需要回復に伴う車載・産業機器向けのTFT液晶が好調でした。

また、フォトマスクやFC-BGA基板は、半導体需要の拡大を受け需要が大きく増加しており、エレクトロニクス領域全体で前年比営利150.8%の大幅増益となりました。

中期的な戦略の目論見

エレクトロニクス領域を牽引するフォトマスク領域は特に発展が見込めるため、分社化して事業価値最大化を目論んでいるようです。

一方で、その他の領域についての同社の課題意識として、2つのことを抑えておく必要があります。

まず、世の中が紙メディアからデジタルシフトしつつあるなか、旧来の印刷事業だけでは先細りすることは避けられません。

加えて、地球環境に対する意識も高まっていることを踏まえ、旧来のように環境負荷の高い素材を提供し続けるのはサステナブルではありません。

そこで、凸版印刷はDX(Digital Transformation)とSX(Sustainable Transformation)をキーワードとして、中期の事業ポートフォリオの転換を図ろうとしています。

具体的には、中期計画の柱を次の3つと定め、収益ポートフォリオを変革しようとしています:

  1. 唯一無二のDXソリューション提供
    • BPOの全てをデータ基盤でつなげ、結果をデータ分析してさらなるコンサルティング提案に繋げる
  2. 海外の生活系事業の拡大
    • 欧州のサステナブル需要の取り込みやASEANの現地事業の拡大
  3. 新事業創出
    • スタートアップ企業と凸版印刷の経営資源と融合させ、新事業を共創する

特に凸版印刷が自社の強みとしているBPOについては、ビジネスプロセスのデータ化と、そのデータを元にしたコンサルティングでさらにソリューション提供するなど、非常に力を入れているようです。

1つめ、2つめは、ある程度、同社が確定的に目指せる未来像の1つと思われますが、おそらくそれだけでは「将来生き残れるかわからない」と考えているのでしょうね。

だからこそ、3つめの新規事業も「中期計画の柱」と宣言されるまでに、非常に重要視されているものと思われます。

バランスシート(2022年3月時点)

自己資本比率

62.8%

調達資金のうち、純資産、すなわち金融機関等に返す必要のないお金の割合

流動比率

211.8%

1年以内に発生する支払い義務が生じる負債に対して、すぐに現金化できる資金を持っている割合。一般に100%以上が適正、200%以上は安全

総売上回転率

0.68回

売上に対する総資本の割合。多すぎない元手で適切な売上を得られているかを示す。業種に寄るが、一般に1~1.5回以上が効率的な経営の目安

主要な働きかたの指標(2021年度)

入社後3年定着率

-

平均勤続年数

-

有給休暇平均取得

10.5日

月平均残業時間

-

自社のホームページなど、信頼できるソースで公開されている情報が少なく、実態が分かりづらいです。

新卒採用の動向

直近の採用人数

営業・事務・企画系技術系
2022年度~210名~210名
2021年度~230名~180名
2020年度~200名~170名

こちらも信頼できるソースで公開されている情報が少なく、採用実績人数の実態が分かりづらいです。

2大印刷会社の企業研究

2大印刷会社の凸版印刷、大日本印刷の企業研究は、以下の記事をご確認ください。

  • 凸版印刷 (連結売上1.5兆円、純利益1,232億円*)
  • 大日本印刷 (連結売上1.3兆円、純利益972億円*)

*いずれも22年3月期

また、凸版印刷、大日本印刷の事業の強み・違いの比較については、以下の記事をご確認ください。