凸版印刷と大日本印刷の強みの比較

ビジネスモデル

この記事では、凸版印刷大日本印刷の比較についてまとめます。

(2023年2月時点の情報に基づいています)

3つの主要事業領域

凸版印刷も大日本印刷も、100年以上前の1870~1900年ごろに創業した印刷事業会社にルーツがあります。

そこから紆余曲折あるものの、現在の両社は、ともに大きく3つの事業領域で展開しています。

  1. 情報コミュニケーション領域
  2. 生活・産業領域
  3. エレクトロニクス領域

両社とも、今や直接的には印刷会社と想像しづらい事業形態に進化しつつあります。

日本国内の2大印刷会社である凸版印刷も大日本印刷も、同じような事業領域を抱える展開となっているのは興味深いですね。

それぞれの領域の特色は、次の通りです。

1.情報コミュニケーション領域

旧来の事業主軸であった印刷・出版のほか、紙媒体のデジタル化、デジタルマーケティングやセキュリティなどのDX化、紙からデジタルへ企業の変革の支援、BPO(Business Process Outsourcing)などで構成されます。

印刷や出版とデジタル化というものが1つの事業領域として扱われているのは、顧客の「情報の伝え方」を最適化することに本質的な軸をもつ事業であるゆえ、あるべき情報コミュニケーションのありかたを支援する事業するという点で何ら変わりはない、ということなのでしょう。

2.生活・産業領域

食品や飲料、日用品・医薬品の包装材のほか、住宅や商業施設、医療・介護施設、自動車や鉄道車両の内外装材などで構成されます。

「印刷技術を紙以外にも転用する」という軸から、様々な装飾材の展開をしてきたのだと思われます。

3.エレクトロニクス領域

電子部材やフィルタ、ディスプレイ部品・部材を開発・販売するなどで構成されます。

印刷先や情報表示先となる素材の開発からノウハウを転用し、半導体・電子部品領域へ事業展開しています。

売上・利益から見える強みや今後の注力ポイント

同じような事業領域の進化を遂げている両社ですが、それぞれの強みや力の入れどころはどうなっているでしょうか。

これを明らかにするために、22年3月期の売上の構成比で両社を比較してみることにしましょう。

売上構成比の比較(22年3月期)

こうしてみてみると、両社とも主要3領域で同じような売上構成をしているように見受けられますね。

営業利益構成比の比較(22年3月期)

では、営業利益ベースで見るとどうでしょうか?

同じく、22年3月期の営業利益構成比率でチェックしてみましょう。

原価率の高い情報コミュニケーション領域や生活産業領域に比べ、相対的に営業利益率のいいエレクトロニクス領域が占める割合が両社とも大きくなることが分かります。

ただ、その中でも、凸版印刷が情報コミュニケーション領域の構成が大きい一方で、大日本印刷のエレクトロニクス領域の営業利益は同社の半分以上を構成することが分かります。

凸版印刷の場合、「情報コミュニケーション」の中でも、従来の印刷領域だけではなく、BPOの全てをデータ基盤でつなげ、その結果をデータ分析してさらなるコンサルティング提案につなげていくなど、同社ならではの唯一無二のDX化ソリューションの提供に力を入れています。

一方で大日本印刷の場合、「エレクトロニクス」の中でも、世界トップクラスのシェアを誇るスマートフォン用の有機ELディスプレイやEV車用のバッテリー包材など、印刷の基礎技術を応用した電子素材領域の展開に力を入れています。

同じ印刷にルーツを持ち、同じような3つの事業領域を持つ両社ですが、双方ともに言える事業の課題としては、紙の印刷はますます需要縮小していく、ということです。

その中、業務ソリューション寄りの強化を目指している凸版印刷と、電子素材開発寄りの強化を目指している大日本印刷という戦略や強みの違いが見えてきます。

営業利益率の比較(22年3月期)

ちなみに、このそれぞれの強みは営業利益率にも出ているように思われます。

凸版印刷は、情報コミュニケーションなどの分野でコンサルティングなども含めた付加価値をつけることが得意なゆえ、営業利益率が高めです。

一方で、大日本印刷はエレクトロニクス分野で唯一無二性の高い製品を保有していることから、営業利益率が突出しているようです。

2大印刷会社の企業研究

2大印刷会社の凸版印刷、大日本印刷の企業研究は、以下の記事をご確認ください。

  • 凸版印刷 (連結売上1.5兆円、純利益1,232億円*)
  • 大日本印刷 (連結売上1.3兆円、純利益972億円*)

*いずれも22年3月期