ソニーグループの企業研究
この記事では、ソニーグループ株式会社の企業研究についてまとめます。
(2023年2月時点の情報に基づいています)
10秒でわかるソニーグループのまとめ
かつては「ウォークマン」「Vaio」などの強力なブランド力を持つエレクトロニクス商材を中心とした企業でしたが、2008年のリーマンショックを境に、数千億円規模の赤字に転落しました。
しかし、音楽・映画・ゲームなどの複合領域を持つ強みを生かし、「感動」を生み出すコンテンツ業態中心に組み替え、鮮やかに復活しています。
現在はエレクトロニクス会社というよりは、エレクトロニクスに強みを持つエンターテイメント企業、と認識した方がよさそうですね。
直近の純利益は6,324億円。従業員一人当たり純利益は581万円。(22年3月期)
会社概要
会社名 | ソニーグループ株式会社 |
URL | https://www.sony.com/ja/ |
本社 | 東京都港区港南1-7-1 |
資本金 | 8,804億6,500万円 |
従業員数 | 連結 108,900名 |
事業概要 | ゲーム&ネットワークサービス、音楽、映画、エンタテインメント・テクノロジー&サービス(モバイル・コミュニケーション/イメージング・プロダクツ&ソリューション/ホームエンタテインメント&サウンド)、イメージング&センシング・ソリューション、金融及びその他の事業 |
会社概要の補足
1946年創業で、日本最初のテープレコーダーを創った「東京通信工業株式会社」が前身です。
2000年代前半まではポータブルオーディオプレイヤー「ウォークマン」や、PCブランド「Vaio」など、AV関連やトランジスタ関連のエレクトロニクスを中心とした業態でした。
ところが2008年のリーマンショックを境に、数千億円規模の赤字に苦しみ、ものづくり企業としては危機的な状況に陥ることになります。
しかし、1970年創立のソニーレコード(現ソニー・ミュージックの前身)、1992年のコロンビアピクチャーズの買収(現ソニー・ピクチャーズエンタテインメントの前身)、1993年のソニー・コンピュータエンタテインメント(現ソニー・インタラクティブエンタテインメントの前身)など、音楽・映画・ゲームなどの複合的な領域を持つ強みを生かし、エンターテイメントを中心に据えたコンテンツ業態中心のポートフォリオに組み替え、鮮やかに復活を遂げています。
また、1980年創立のソニープルデンシャル生命保険(現ソニー生命保険の前身)、2001年創立のソニー銀行も含め、インターネットを活用した金融業という新しい分野を開拓したことでも知られます。
理念・ビジョン
クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。
ソニーグループ HP「Sony's Purpose & Values」より
2000年代まではエレクトロニクス中心の「ものづくり企業」として世界を牽引していたソニー。
しかし、Appleの台頭や2008年のリーマンショックを境に、数千億円規模の赤字に苦しむことになりました。
ところが、およそ10年後となる21年3月期には純利益1兆円超を達成するなど、鮮やかな復活を遂げています。
その過程で、企業が存在する目的・Purpose:存在意義は、世界を「感動」で満たす、という軸である、と再定義されました。
かつてものづくり企業として情熱を注いでいた「感動を生み出す」ということを、ものづくり企業の枠を飛び越えて実現することに強い意欲が伺えます。
後述する業績のポートフォリオも、過去のエレクトロニクス中心の業態からは鮮やかな変貌を遂げています。
会社のビジョン・存在意義を起点に、「モノ」ではなく「コト」に真っ直ぐ向き合った結果、わずか10年という短期間で大胆な業態変更に成功した稀有な大企業であると言えそうですね。
業績
売上・純利益(株主帰属)の推移
直近の純利益(株主帰属)
6,324億円
2022年3月期
従業員一人当たり純利益
581万円
2022年3月期
連結従業員数108,900名で除算
営業利益の構成(2022年3月期)
営業利益から全社コスト、法人税等を差し引いたものが概ねの純利益となるため、セグメントごとの業績は公開されている営業利益構成から推し量ることにします。
22年3月期は昨年に比べると映画、エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション(以下EP&S)が⼤幅増益を牽引しました。
特に、映画領域は『スパイダーマン︓ノーウェイ・ホーム』の歴史的大ヒットや⼈気テレビ番組のライセンス収入、およびGSN Gamesの事業譲渡に伴い、昨年比1,375億円増の大幅増益でした。
また、エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション領域は、デジタルカメラ、テレビのラインナップ刷新により、昨年比851億円増の収益牽引に結び付きました。
今後の重点戦略
同社の中期計画では、注力する領域を次の4つと定めています:
- ゲーム&ネットワークサービス(以下G&NS)
- TVゲームハードウェア「Play Station 5」を起点とした筐体・ゲームソフトウェアの展開
- 音楽
- Sony Musicを中心とした音楽コンテンツの展開
- 映画
- Sony Picturesを中心とした映画コンテンツの展開、およびIP(intellectual property:知的財産)の展開
- イメージング&センシングソリューション(以下I&SS)
- デジタルカメラやスマートフォンなどの、画像を取り込む部分に使用されてるセンサーの開発・販売
G&NSでは、さらなるコンテンツ提供能力を上げるべく、米Haven社(「アサシン クリード」シリーズを⽣み出したジェイド・レイモンド⽒が中⼼となって設⽴したスタジオ)を買収し傘下に収めるなど、傘下スタジオへのコンテンツ投資強化を進めています。
音楽領域では、アーティストの発掘・育成の強化やレパートリーの拡充、Alamo Recordsをはじめとしたレーベル買収などを進めており、Spotify週次グローバル楽曲ランキングの上位100曲に平均36曲がランクインするなど、ヒットを継続して創出する⼒を強めています。
映画領域では、IP戦略の柱として「スパイダーマン」に絡んだキャラクター展開を行うSPUMC:Sony Pictures Universe of Marvel Charactersの新作コンテンツの作成を進めるほか、ゲーム「ゴースト・オブ・ツシマ」「ザ・ラスト・オブ・アス」などの映像化を進めています。
I&SSでは、中国のスマートフォン市場の停滞により厳しい状況が続いているようですが、ハイエンドスマートフォンの拡大に合わせてイメージセンサーの⼤型化や⾼画質・⾼付加価値化に再び注⼒する傾向が顕著になっており、モバイルセンサー市場の再成⻑を見込んでいます。
バランスシート(2022年3月時点)
自己資本比率
23.6%
調達資金のうち、純資産、すなわち金融機関等に返す必要のないお金の割合
主要な働きかたの指標(2021年度)
入社後3年定着率
-
平均勤続年数
16.7年
有給休暇平均取得
14.8日
月平均残業時間
-
同社のサステナビリティレポートに詳細なファクトデータの記載があります。
ただしグローバル規模の平均値なので、事業部や国ごとに状況は大きく異なるとみられます。
日本国内に限ると、勤続年数は15.2年、有給取得日数は13.2日となっているようです。